パワーストーン, 混沌魔術

パワーストン考察

真紅の騎士 水蓮 31

スピリチュアリストの間で、根強い人気を持つパワーストーンについて、少し考えてみた。
私自身も、パワーストーン愛好者であり、かつては強迫観念を植え付けられるほど、夢中になっていた時期がある。
その頃の懺悔も踏まえて、まだ仮説の段階ではあるが、書き残しておきたく、ここに論文として提出する。

パワーストーン(以降パワスト)関連の本を見ていると、やたらと波動という言葉が目立つ。
「この石は柔らかな波動を持ち~」「強い波動で~」など。
確かに、石によって持った感覚が違うということは否定できない。
これ、実は偶然に面白いことに気が付いた。
私の手元にはオニキスとショール(ブラックトルマリン)の同じ大きさのビーズがあった。
この2つの石、パッと見ただけでは区別が付かない。見分けられない人も多い。
何か、区別する方法はあるのか? とジッと観察してみた。
微妙に質感が違った。そして、指でつまんで持ってみる。微妙に重さが違う。
本で調べてみると、この2つの石は比重が違った。
オニキスに比べて、ショールの方が少し重いのだ。
成分も違う。オニキスは瑪瑙なので、二酸化ケイ素が主な成分である。
ショールはトルマリングループの中でも鉄分を多く含む。だから黒い。
この2つの質感や重さが違うのは、一目瞭然である。
パワストの本にはこう書いてある。
「オニキスは軽い波動。ショールは重い、粘着力のある波動」
そのまんまである。
これは波動って言ういかにも神秘的な言葉で言われているように聞こえるが、
実は、人間の触覚や視覚を研ぎ済ませば、すぐにわかることなのである。
しかし、もし大きさの違うオニキスとショールのビーズを区別しろと言われれば、
間違える可能性は高い。一度、挑戦したいものだが。
それも自称ヒーラー、霊能者の方々が一緒に挑戦してみたら、面白いだろう。
同じように間違えるということは、簡単に予測できる。
念のため、言っておくが、私の本職はビーズ作家である。毎日さまざまなビーズに触れているため、多少触覚が敏感なだけなのである。

上記の例から見てもわかるように、天然石には成分によって、モース高度も違うし、屈折率も変わる。それによって質感と触感も変わってくる。
これを、神秘的なこととし、波動という言葉を使うのがパワスト信者だ。
触感について、もう一つ。
熱伝導しやすい成分というものもあるのではないだろうか。
そして、熱を放射しやすい成分というのも。
触っていて熱くなるとか、冷やされる、などの話も聞く。
この辺りは、化学の弱い私は検証するのに時間がかかってしまう。
なので、仮説を立てているだけである。
あと、これも仮説であるが、パワーが強いといわれる石は、大体マグネシウムを多く含むものが多い。
マグネシウムが人体に及ぼす影響があるのだろうかと、考えている。
この辺りは、化学や医学に詳しい方にご協力をいただきたい。
しかしながら、やはりパワストというものに効果があるのならば、何故、この世から戦争と貧困と病気がなくならないか?という疑問に突き当たる。
私は、古代からの伝承というのも気になるが、ある意味、人は見た目の美しいものに対して、神秘的な幻想を抱いてしまうものなのではないだろうか、と考えている。

もう一つ、ブレスや数珠が切れたりすると云々という話があるが、これも質感の違いだろう。
何種類か違う石のビーズを糸に通して弾いてみたが、綺麗に糸を滑るものと、引っ掛かるものがあった。
瑪瑙や水晶系の石は綺麗に糸を滑るし、触ってみてもつるつるしていて気持ちいい。
だから、一般に数珠として販売されているのは瑪瑙・水晶系が多いのだろう。
パワスト信者が「強い石」と挙げるスギライト、チャロアイトなど、恐らくこの石たちは糸への摩擦力が強いのだろう。確かに、触感は瑪瑙系に比べると、少しざらざらしている。
つるつるした触感の石と、ざらざらした触感の石とでは、糸への摩擦力が違うだろう。
糸が切れるのも、その石のパワーなどではない。その石の成分から来る質のせいだ。
それにプラス、糸の消耗でしかない。
切れたからといって、悪いことなど起こるはずもない。
そういうものである。

パワーストーンというものが流行り、それによって、人が何かしらの心の拠り所とするのはまだ許せる。
しかし、そうではなく逆に「持っていなくてはいけない」という強迫観念に囚われたのでは、本末転倒である。実は、最近そういう人をよく見かける。石に依存しすぎ、最悪な場合、「石が話しかけてくる」と思い込む状況に陥る。

私は、パワスト関係なく、石は好きである。だからこそ、あまりにもこのような神秘思想がはびこることに、反発を覚えているし、時に悪いことを全て石のせいにしてしまう風潮もどうかと首をかしげる。
ネットで情報が氾濫し、それを信じ込み、それによって自力での思考力をなくし、洗脳されている人が多すぎる。どうか、冷静に自分で検証して考えてみて欲しい。

つたない論文ではあるが、これが少しでも迷える探究者、魔術師たちの指針となればと願う。